地震に伴う電磁気現象がナマズの異常行動を誘発するのではないかという考えは,1917年にParker & Van Heusen (1917)によって,ナマズ目のブラウンブルヘッド(Brown bullhead)に高い電気感受性が発見されたころから始まる(浅野,1985).その後,1931年には,畑井ら(1932a, b)によってナマズの行動と地震との関係およびパルス状の地電流変化との関係が指摘された.さらに,1976年~1991年までの16年間,東京都水産試験場によってナマズの定量的な観察が行われ地震との関係が評価された(東京都防災会議地震部会,1980-1992).その間,Asano and Hanyu(1986)によって,生物学的な観点からナマズの電気感覚についての研究が行われ,ナマズが1~30Hzの電位変動によく反応し,0.05μV/cmの閾値を有し保身に不可欠な情報, 餌や外敵の存在を示す情報を電気的な形で捉えていることが示された.そして,藤縄・高橋(1994)によって1992年2月2日に三浦半島沖で発生した地震(M=5.9)の直前の東京都水産試験場のナマズの行動量と茨城県波崎における地中電界変動のULF帯(0.01~0.7Hz)の異常パルス数の顕著な関係性が指摘された.しかし,これらの研究では,地震と電磁気現象とナマズの行動の3つの関係性についての結論が得られていない.その課題のひとつとして,ナマズの行動と電磁界変動の同時観測による研究が十分に行われていないことが考えられる.