神奈川県淡水魚増殖試験場(1983-1987)は神奈川県における防災対策の一環として地震予知の可能性を検討するため,1979年から1984年まで,ナマズの行動の連続観察を行い,地震と関連性が認められる異常行動の抽出を行った.ナマズの行動の定量化には魚群探知機と光通過センサーを用いている(図1参照).魚群探知機は野外コンクリート池(11*5*0.7m)に30匹のナマズを飼育し動きを映像として記録するものである.それとは別に光通過センサーを水槽に6対設け,ナマズがセンサーの間を通過した時刻を記録した.魚群探知機での異常行動の判別基準は正常時との区別が確立されないまま研究が終了したようである.光通過センサーの異常判定基準は6対全てに反応した継続時間の頻度分布から1.8~9時間継続したものを異常と判定した.1979年4月から1985年3月までに発生した横浜における有感地震数は162,震度3以上の地震数は24であり,魚群探知機方式によるナマズの群観察法では,調査期間(1981年4月~1985年3月)中に発生した有感地震に対して異常行動は全く認められなかった.光通過センサーでは1979年4月以降の6カ年間,震央距離100km未満,震度3以上の24の地震に対応するナマズの異常行動は10回あった.期間中のナマズの異常行動は150回あり,地震発生確率を10/150とし6.7%と計算している.結論としては,地震予知のための情報としては不満足なものであったとした.
図1 神奈川県淡水魚増殖試験場のナマズ観察設備図