ナマズの行動の観察と定量化システムの考案と構築
ナマズの観察
本研究は2001年4月より準備を始め2001年12月にナマズの飼育環境の整備と定量化システムの構築が一応終了した.最終的な観察および定量化方法を決定するのにはもうしばらく予備的観察期間が必要である.予備的観察ではナマズ自体と行動を記述し理解することを目的とする.問題を明確化させ仮説設定のための情報を生み出し,定量化する行動の選定,測定方法を検討し,測定の信頼性と妥当性を考えるためにこの予備的観察は必要不可欠と考えられる.行動の基礎となるメカニズムを理解するためには,行動自体を理解することが必要であり,そのためには行動の徹底した記載と分析,もしくは行動の定量化を行う必要がある.これを行うには24時間連続観測がのぞましいが,現時点においてはビデオ自動撮影画像を基にそれを行っている.
究極的には,これらの観測結果に基づいて刺激が行動を誘発し制御する神経生物学的・心理的・ホルモン的な機構とどのように関係しているのか.そして,刺激はナマズの一生の行動の発達にどのような影響を与えているのか.ある行動はどのようにして個体の繁殖と生存に役立つのか.対象とする種の歴史のなかで行動はどのように進化してきたのかなどを可能な限り追求してゆくことが重要であろう.
観測定量化システム
観測定量化システムは,生体電位,光通過センサー,振動計,画像解析を主に検討し実験を開始した.生体電位計測はASANO andHANYU(1986,1987a,b,c)の方法を参考にし塩ビ管に電極を取付け,主にナマズの尾びれの動きに伴う筋電位変化を捉えるものである.ナマズは常に塩ビ管に入り込む性質を有することから,刺激要素に対する反応の初動を捉えられると期待している.光通過センサーは塩ビ管から出て泳いでいるナマズの動きを捉えることを目的としている.振動計は地震計を利用し水面に浮かべ,
ナマズの動きにより発生した水流や振動を捕らえるものである.画像解析は水槽上部からのビデオ撮影を行い平面的な動きを捉える試みを行っている.ビデオ撮影は定量化と同時に定性的に行動を理解するにも役立つ.