宇宙から地震を予測できるか? Demeterの回答
* 和訳:Dr. Tatsuo Onishi
Part-1
1.地震電磁気現象観測の歴史
2.LAIカップリング仮説の説明(岩石破壊やラドン放出など)
3.電離圏についての説明
4.DEMETERのもう一つの目的:地上の人間活動から出てくる電波伝播観測
5.統計的に得られた結果:手法と内容
6.DEMETERは地震予知をするためのものではなく、地震「前」に電離圏で何かが起こるということを強調
Michel PARROTの紹介、質問「DEMETERは宇宙から地震を予知できるのか?」
Michelの返答「そうではなく、地震前電離圏の現象の研究が目的」
CS: 宇宙から地震前に何か観測できるか?というのが出発点ですね?
MP: その通り、電離圏において地震前に擾乱があることを証明したいということです。
CS: そのアイデアはどこから?
MP: このアイデアは古いもので、最初の論文は1890年にまで遡ります。地震と電磁現象の相関を観測しました。
CS: どういうタイプの?
MP: 例えば、日本において空気中の静電場の変化です。
CS: 嵐や稲妻によるものですか?
MP: いいえ、静電放電が観測されています。最近といっても15年ほど前ですが、地震数時間前に偶然、電磁波が観測されたという論文があります。地上観測でした。衛星観測ではありませんでしたし、本来の研究目的も違うもので、この結果はたまたま得られたものです。その後もいろいろと論文がだされ、現象を説明するための仮説も出されています。
CS: 仮説ですが、それは理論ではなく、実際の観測に基づくものですね。
MP: そうです。電磁場の強度が地震前に変化しているケースがいくつか報告されています。
CS: 特に1960年のチリの地震は有名ですね。
MP: その通り、メガヘルツ帯の高周波数の放射変動が地震の6日前に現れました。
CS: それは誰がどのように観測したのですか?
MP: 電波天文学者です。星からの電波を観測しているときでした。
CS: ここから大地震の前兆と言う考えがあらわれたのですね。
MP:その通りですが、これらの方法で地震を予知することはできません。予知をするということは、大きさ、場所、時間の3つを予知する必要があります。DEMETERのデータにも地震前に何か見つけることができますが、だからと言って地震が予知できるということではありません。
CS: 19世紀の観測ですが、どのように解釈されましたか?何がはっきりしたのでしょう?
MP: 多くの仮説がありました。大まかに説明しますが、例えば、岩石が圧縮されたときに電磁波が出る事が観測されています。石英が含まれていると電磁波も強くなります。しかし地下30〜40キロの地震源付近で発生すると地表までは到達しません。そのためには断層を通っていくか、加圧か加熱による伝導率の変化が必要です。しかし、それを説明するのは大変困難です。
CS: すなわち、一つ目のアイデアでは、圧縮が地震を誘発する。地震とは切断であり、岩石は破壊されます。圧縮が電磁波を出すということですね。
MP: それは実験室で確認されています。もうひとつの仮説は、岩石を圧縮した際に電子が外に飛び出します。その電子が地表にまで到達して、下部電離圏と大気圏の間の電流に変化を起こすのです。
CS: 説明が必要ですが、電離圏とは?実際、どこにあるのですか?
MP: 高度50キロ付近です。それらは大気圏嵐などがある時の電流そのものです。下部電離圏と地表の間には電流が流れるのです。その電流量が岩石の圧縮によって地上に現れた新しい電荷によって変化する事がありえると言う事です。
CS: それは情報システム、すみません、いわゆる地表の電流と高度50キロの間で行われる通信システムを形成しうるというものですか?
MP: その通りです。それが二つ目の仮説です。三つ目の仮説はガス放出です。大地震前に地中のラドンが空気中に放出することが観測されています。放射性のラドンです。ラドンが大気中に現れると、空気中の伝導率を変え、そして電磁波の伝播条件を変えるとされています。そして今説明した通り、下部電離圏と地表間の電流を変えるのです。
CS: ラドンとは、ブルターニュ地方の花崗岩でできた家によく存在するラドンですか?それが空気中に放出されるのですか?
MP: 大気の状態を変化させるには、かなりの量が放出されないといけません。
CS: それらが3つの仮説ですね。他にありますか?
MP: 他にもありますが、あまりよく知られていません。例えば地表の温度変化により音波重力波(acoustic gravity wave)の条件が変化するということです。高度が上がると密度が下がるので、振幅が大きくなります。そのため重力波は高度とともに大きくなるので、重要な要因になるかもしれません。これも仮説です。
CS: そこからDEMETERの構想が生まれたのですが、要約するとDEMETERの目的は何でしょうか?
MP: それは地震前に何があるかを見ることであり、より多くのケースを集めて、どのような擾乱が地震前に電離圏で起きるのかを確かめることです。
CS: 電離圏のイメージを説明していただきたいのですが、電離圏とはなんでしょうか?電離圏とはある意味、大気圏と言えますでしょうか?理論上の境界は高度100キロのところにあることは知られています。電離圏とは何でしょうか?
MP: 電離圏とはある意味大気圏なのですが、太陽からの光線によって大気分子が電離したところです。すなわち、電離圏とは電子とイオンから構成されています。密度がもっとも大きくなるところは高度350から400キロ付近です。
CS: 層ですね。
MP: そうです、層です。我々のまわりを囲む層であり、明らかに昼夜によって変化します。太陽活動サイクル(11年)にあわせても変化しますので、密度もこのサイクルにあわせて変化します。
CS: 電離圏の上は磁気圏ですね。
MP: 磁気圏は地磁場によって構成されていて、我々を太陽からの太陽風から守ってくれています。太陽風は極域に達し、磁気嵐の際にはオーロラなどを形成します。それらの粒子は放射線帯に入り込みます。磁気圏には二つの放射線帯があり、内側と外側の二重構造になっています。
CS: すなわち電離圏とは、説明していただいたように、電離した大気分子による、上部大気圏と磁気圏の中間層ということですね。地上で起きていることが太鼓の皮のように、そこで振動しているということが言えるのですね?
MP: 一方では太陽の影響があり、もう一方では地上で起きていることが影響しています。例えば、嵐がある際には、下方電離圏ではその影響がでます。擾乱が出るのです。
CS: すなわち、DEMETERの目的は電離圏を観測することですね。
MP: DEMETERを使って電離圏からできるだけ多くの地震事象を観測することです。それから、DEMETERの二つ目の目的としては、人間の活動に関係のある擾乱を電離圏で確認することです。
CS: 例えば?
MP: 例えば、高圧線や通信や航行に使うための電波の送信などです。
CS: 高圧線が50キロもの高度のところにまで影響するとは考え難いのですが。反比例するように思えます。
MP: そんなことはありません、高圧線からは膨大なエネルギーが発せられています。ある条件下において、DEMETERはヨーロッパ上空を飛ぶ際には50Hz、アメリカ上空では60Hzにおいて電波を観測しています。すなわち地表から700キロ上空まで伝播しているのです。
CS: 先ほど、地震予知に関して三つの条件を示されましたが、これは高圧線からの電波の位置を電離圏で示すことができたということですか?
MP: それはちょっと複雑ですが、電波伝播現象です。つまり、DEMETERでは電磁場の各成分(各三成分)が記録されるので、逆レイ・トレーシングの方法を使ってその電波の源を見つけることができるのです。
CS: 精度は良いですか?
MP: 精度は100kmほどです。密度モデルを使う必要がありますので、ある程度の不確実性は出てきます。
CS: あなたはCNESを説得し、この小さい衛星を打上げることに成功されました。今現在で4年が経っています。4年たった今の成果は何でしょうか?
MP: 4年ではありません。2004年6月でしたので、3年です。
CS: 本インタビュー収録時に2年延長されましたので、長期的になっています。今日、大地震の前兆を明確に確認したと言っても良いでしょうか?
MP: 具体的に言いますと、電離圏について話をしましたが、電離圏は非常に変化が大きく、いろいろなものの影響を受けています。最も大きいものは太陽です。そこで、大地震に関して観測してました。すると、計測されたパラメータが地震の前に変化しているのを実際に確かめられたのです。すなわち、地震前の時間と位置を相対的にした場合、変化があったのです。そしてその数日前と数日後にはそれらの変化はもうなかったのです。
CS: すなわち何かがあったと。
MP: 何かは観測されました。電離圏は非常に変化が大きく、また地震は沢山あります。ですので、どんなに注意深くしていても、ある変化と地震を関係付けるには簡単です。我々が示したことで、非常に重要なことは、この膨大なデータをつかって統計をとることができるということです。まさにDEMETERの威力が発揮されるところです。すべての地震に対して、統計的に、各地震のケースを見るのではなく、統計的に電離圏において現象が現れるということを示すことができるのです。しかしながら、これで地震を予知できるということではありません。我々は統計的に変化が現れることを示したということです。ここが重要です。
CS: よくわかります。統計的に電離圏での電波の情報量がわかり、どの周波数で地震前に変化を見つけられるということですね。地震は年間数千回起こりますが。
MP: その通り。我々はマグニチュード4.8以上の地震に関してのみ確認しています。統計もそれらの地震になされています。
CS: あなたにとって、満足できるものですか?
MP: 我々にとって、我々は地震の前に電離圏に何かあることを示しました。
CS: 地震の前兆としては、明確で典型的な兆候ではありません。それは統計的結果ですね。
MP: その通り、統計的な情報なので、特定の地震に関しては何も言うことができません。
CS: この結果はいろいろと物議を醸し出しています。地球物理学者の中には厳しい態度をとる人もいます。Ciel et Espaceでも多くの地球物理学者にインタビューしました。例えば、パリ地球物理研究所のPaul Tapponnierは「この結果では、ただ一人の地震学者も納得させられないし、私も情報を得ようとは思わない。結局これは失敗だ。」と言っています。これらについてどう反応されますか?ある意味、特定の地震に対して、明確で詳細であり、かつ際立ったシグナルがないということ自体があなたにとって一つの情報なのではないでしょうか?
MP: それはDEMETERの目的ではありません。地震予知ができないと思っているのは地震学者だけではありません。我々もDEMETERで地震予知をしようと思ったことは一度もありません。DEMETERの目的は地震を予知することではなく、地震前に何かがあることを示すことです。なんどもいいますが、統計的にすることです。ある一定の地域で統計的に何かあることを示せれば最も良いでしょう。そうすれば、その地域をもっと重点的に観測し、どのような地震がどの規模でどんな形で現れるか、そして大気圏においてどう変化するかが統計的にわかります。それからある種の条件を示して、その条件を満たすかどうか、全てのデータを照らしあわせます、そしてその条件が満足されるごとに、実際に地震があったかどうかを確かめるのです。
CS: 地上にいる我々にとって非常に都合の良い方法としては、「3日後、ロサンゼルスに大地震がきます、避難してください」といった情報を我々は待っているのです。そうすれば非常にわかりやすいと思います。
MP: 決してあり得ません。DEMETERはそういうことは絶対できません。不可能です。
CS: そういう計測は、そういう警報は、地上(観測)から始められるでしょうか?
MP: そうなると思います。間違いなく、30年後、または50年後にはそうなると確信しています。地震学者の中には地震はランダムな現象だから予知できないという人もいます。しかしながら、我々は例えば、地震が起こっていることを知っています。地震でよければ、私でもマグニチュード5以上の地震が一ヶ月以内に日本で起こると予言できますし、当たっているでしょう。
CS: それは何年もかかりますね。
MP: とにかく、我々は手法を確立しました。将来、地震が予知できる日が来ることを確信しています。
Part-2
1.DEMETERの名前の由来
2.DEMETERの大きさ
3.ロシアの打上げ機について
4.観測軌道について
5.データ処理の方法と伝達方法
6.フランスの研究機関について(CNRS, Orleans)
7.オーストラリアにあるアメリカ軍の送電所(NWC)
8.HAARPについて
9.電離圏における「電子戦争」について
10.DEMETERが民間プログラムであること
11.地震以外の現象(津波、火山)
12.Acoustic Gravity Wave
13.地震学者との関係について
14.他国のプログラム
16.小型衛星の後継機(地震予知でない分野):TARANIS
17.電離圏と大気圏の研究とシグナル伝播への影響について(GPS)
CS: DEMETERの名前の由来は?どうして豊穣の女神の名前なのでしょう?
MP: CNESにプロジェクトを提案する際には頭字語が英語で何かを意味する名前をつける必要があります。DEMETERはDetection of Electromagnetic Emission Transmitted from Earthquake Regionです。
CS: 上手くつけましたね。
MP: はい、とても。
CS: DEMETERは小型衛星ですね。
MP: そうです。CNESのMYRIAD小型衛星シリーズの一計画です。高さは80cmで底は60cm四方。重さは130kg。ところが、若干超過搭載気味です。衛星自体が擾乱を起こすので、電磁波を測定するためにアンテナを伸ばす必要がありました。長さが4メートルのアームがあります。そこに電場の測定器があり、もうひとつのアーム(1m90cm)には磁場の測定器が設置されています。
CS: アームとしては長いですね。どのような方法で打ち上げましたか?
MP: もともとミサイルだったロシアのロケット、ドニエプルで打上げました。サタンというSS-18ミサイルの転用機です。非常にうまくいきました。このようなミサイルでは10000kmの射程距離を50kmの精度で発射できるそうです。
CS: 悪くないですね。
MP: ええ、悪くないです。
CS: 極軌道ですか?
MP: 極軌道です。地球の全地域をカバーしたかったからです。太陽同期準回帰軌道の極軌道です。すなわち、同じ地域の上空を同じ現地時間で通過します、朝10時と夜22時です。
CS: データは引き続き送られてきますね。どこにですか?
MP: データは継続的に受信されるわけではありません。データは衛星上で記録されます。非常に大きな記憶媒体が搭載されています。トゥールーズの上空を通過するたびに、CNESのSAGELにデータが送信されます。1日に2回、昼間に1回、夜に1回です。そして、衛星のメモリーは空にされます。トゥールーズでデータ処理がされた後、普通のインターネットを通して、オルレアンに送られます。オルレアンは我々のミッションセンターであり、データ解析をしています。
CS: それが唯一の研究所ですか?
MP: データが直接送られてくる唯一の研究所です。しかしながら、フランスには他にも研究所があり、そこではデータ解析がされ、オルレアンにあるデータへのアクセスもあります。
CS: DEMETERミッションにおいて、地震が唯一の研究対象ではないと理解していますが、ほかにはどのような研究分野があるのでしょうか?得られた情報からどんなこことが分かりますか?
MP: DEMETERは電離圏において観測します。電磁場の計測や、プラズマの成分を調べたりします。ですので、地球の電磁環境を監視することができるのです。それによって非常に多くのことを学ぶことができます。また、通信用送信局からやってくる大型の擾乱、特に、NWCとよばれるオーストラリアの送信局は、世界でもっとも強力な送信局の一つで、数千キロワットの出力です。アメリカ軍の所有で、通信手段として使われています。そして、それは電離圏を加熱するのです。すなわち、それぐらい大きい出力だと電離圏の状態を変えることができるのです。イオンや電子の温度が上がることが衛星の高度でも観測されます。これはDEMETERで初めて観測されました。DEMETERはこういうタイプの計測ができるのです。
CS: アメリカ軍はその送信所を何と通信するために使うのですか?
MP: 潜水艦と通信するためです。
CS: 電離層の反射も利用するのでしょうか?
MP: 大地電離層導波管と呼ばれており、電波は伝播していきますが、出力がこのように非常に大きい場合、電離層を通過して伝播していくことがあります。そのときプラズマの温度が上昇するのです。
CS: アラスカにあるアメリカの施設、HAARPがよく話題に上がりますが。
MP: HAARPは実験的な送信所で、科学的にのみ使われています。実際、DEMETERでもアメリカの科学者達と共同研究をしています。彼らは特定の電波を送信し、我々はアラスカ上空でそれを受信するのです。
CS: そこで、民間レベル、もちろん軍隊レベルでも、使用に関して問題があると理解しています。大気圏そして電離圏の一部を通っての通信です。大気やプラズマはあまりよく理解されていないですね。
MP: よく理解はされています。ただ、非常に大きな変化がありますし、多くの制約があります。通信のためには小さな送信機でプラズマの状態を観測することもできるでしょう。
CS: そうですね。特にアメリカ軍にとっては非常に脆弱なところです。
MP: フランスにも送信所はあります。アンドル県のル・ブロンです。15kHzあたりで潜水艦との通信に使っています。
CS: 電離圏に受信機を設置し、町などの上空で、いわゆる電子戦争が行われるかもしれないと想像するのはちょっと行き過ぎでしょうか?
MP: それは全く不可能だとは思いません。可能性はあります。電離圏に擾乱を起こすことによって通信を傍受することは可能です。
MP: 理論的に可能ですね。
MP: 可能です。
CS: 現在既に可能ですか?
MP: ええ。
CS: 電離圏は太陽からの影響と同時に地上活動の影響も受けています。現段階において、それらの影響に対してどう対処すべきか研究する必要がありますね。
MP: その通りです。
CS: DEMETERは民間プログラムですね。
MP: DEMETERは完全に民間です。すなわち、我々のデータはフランスの研究機関からアクセス可能です。それからCNESは招聘研究者の公募を行いました。データへのアクセスもありますし、研究対象がはっきりしている場合、オルレアンへ来てデータをダウンロードすることもできます。
CS: DEMETERは実験的な衛星と言えますか?
MP: まさに実験的です。DEMETERには運用上の制約はまったくありません。科学研究のための衛星です。
CS: プラズマ、通信、地震について話をしてきましたが、火山の爆発や自然災害、例えば、津波などでは大気圏上空でDEMETERは何らかの現象を観測できますか?
MP: 津波に関して言いますと、音波重力波があります。それは地上から伝播する波で、大気圏内での伝播現象です。高度が上昇すると共に波の強度も大きくなります。例えば、スマトラ地震の際も津波の影響が遠くまで伝播しているのが観測されています。これはDEMETERではなく、他の衛星の観測です。
CS: 火山の噴火は?
MP: 火山噴火は事後現象として地震と大変よく似ています。どちらも爆発です。そしてその爆発で音波重力波が発生し、観測されるのです。
CS :地上でなにかがある度に大気圏を通して伝播する一方、何千とある地震の中から一つを特定するにはシャーロック・ホームズになる必要がありますね、実に面白いです。
MP: それ故に統計が必要になってくるのです。もう一度、説明します。例えば、1kHの電波をパラメータとし、その波の強度を地球上で分布図を作ります、3年分のデータを使います。そして地震があった時の軌道があると、そこからパラメータをとり、バックグラウンドの分布図上の値と比較します。そして、すべての地震に対して、地震時の時間を0にし、震源からの距離、地震からの時間そして地震のマグニチュードの関数としたものを、地震の数時間、もしくは数日前から一日後までを表示するのです。こうすることによって、統計的に何かが起こったことを示すことができるのです。
CS: どうして地震学者や地球物理学者にこの実験の有意性が分かってもらえないのでしょうか?
MP: 我々は単に何かがある、という事を示しただけです。しかしながらそれは地震を予知するためのものではありません。そのためにはもっと研究する必要があります。
CS: 確かに、理想的な地震は他に何もないところで起きるのですが、実際は他にもたくさんの雑音のない所で地震を特定する必要がありますね。
MP: まさにその通り。それが理想です。
CS: DEMETERの後継機はありますか?
MP: あると思います。フランスにもあるかもしれませんが、このような研究に興味を示している諸外国があります。例えば中国、トルコ、カザフスタンなど。我々に連絡を取ってきた科学者もたくさんいます。「DEMETERでどうしたのか?」「こんなことはできるのか?」などです。日本では地震学者が重要なポジションを占めているので、現在のところ、我々の同僚は衛星を使ったプロジェクトを立ち上げるのに苦労しています。
CS: あなたは何年この仕事をされてますか?
MP: このミッションの歴史を言いますと、85-90年にロシアの同僚と研究を行い、その後、このミッションの打上げができるロケットを探していました。そして98年にCNESが小型衛星のプロジェクトを立ち上げました。エレクトロニクスも(搭載可能に)十分なレベルでした。簡単な基盤でも、できるだけ多くの現象を観測するために非常に大きいなメモリを搭載していました。まさにそのとき、98年にCNESがMYRIAD小型衛星の開発を始め、我々はこのミッションを提案することができたのです。幸い、CNESによって打上げられた最初の小型衛星に選ばれたのです。
CS: なるほど、それからすでに後継機もありますね。防衛装備庁の4機のESSAIMや、もうすぐ一周年を迎えるPARASOL、それと太陽観測のためのPICARD。
MP: 我々の研究所も選ばれました。Phase-Bが終了したところです。TARANISという小型衛星です。大気圏内の稲妻を研究するためのプロジェクトです。最近わかってきた現象です。電離圏下部で発生した雲から静電放射がおこるのです。文献にも書かれていますので、レッド・スプライトやブルー・ジェットなどお聞きになったことがあるでしょう。
CS: 説明していただけますか?
MP: これは非常に強い静電放射です。雲上空と電離圏下部の間でおこる非常に強い静電放射です。高度50kmから60km付近です。これはつい最近、スペースシャトルの乗組員によって発見されました。
CS: 地球の大気圏が非常に重要な研究対象になってきました。どうして今日、これほど重要になったのでしょうか?カーナビなどの影響でしょうか ?
MP: 違います。まず嵐について話しますと、嵐は地上においてとても重要な現象です。一日に2000の雷が発生し、一秒間に100の稲妻が発生します。これはとても重要です。その稲妻の中にスプライトと呼ばれる現象を誘発し、その現象は大気圏上部で観測されています。
CS: そこがGPS衛星から送られてくる情報が通過するところです。将来のガリレオ計画などのGPSを考えているのですが、情報は電離圏を通過していきます。現在では予知できないよう誤差がわかるようになるのでは。
MP: そうです。他にも衛星があります。たとえばアメリカは2008年7月にC/NOFSという衛星を打上げます。それは基本的に電離圏の現象を研究するのが主要目的です。それは赤道付近を調べます、そのあたりがまさにGPSの擾乱と伝播現象が最もよく現れるところです。
CS: 文献には電離圏は太陽嵐の影響や地球大気圏の影響を最も受けると書かれています。信号伝播にも重要なのでしょうか?
MP: その通りです。磁気嵐があるとき、太陽は非常に強い粒子の束を送ってきます。それらが赤道付近にやってくると電磁波と干渉しプラズマに大きな擾乱を起こします。磁気嵐があると地震予知は難しくなります、なぜなら地震時に観測される値よりも数千倍もある擾乱が起こるからです。
CS: ミシェル・パロ、最後にちょっと難しい質問ですが、もし地震を予報できるなら、いま一般市民にとって最大の懸案です、もし宇宙から地震の予知信号を予報できるなら、もしそれが今日可能なら、やりたいですか?
MP: もちろんです、私にとってそれが成功です。なぜなら我々は地震前に何かが電離圏にあるということを示したかったのですが、それを示すことができました。
CS: 将来、観測の補完として地震学者たちに使ってもらえると思いますか ?
MP: その通り。それから電離圏で起きていることと、地中内で起きていることの相関関係を示すことも大切です。
CS: 一つの地震予知研究所ですね。
MP: その通りです。
CS: 御解説ありがとうございました。
* Acknowledgement: I wish to express my gratitude to Dr. Tatsuo ONISHI and Dr. Maria Carla PARRINI.
Source: Peut-on prevoir les seismes depuis l'espace ? La reponse de Demeter (Ciel et Espace Radio)
[DEMETER.html]