地震・火山まめ知識

  • 津波地震って知ってますか?
     皆様は”津波地震”という言葉をご存知でしょうか。津波地震とは、地震の規模(マグニチュード)の割に、揺れ(=震度)が小さく、結果として揺れの被害はほとんどなく、大きな津波を発生する地震です。津波地震は海底で断層が比較的ゆっくりと、大きく動いた時に発生します。津波地震の概念の確立に役立ったのは、1896年の明治三陸地震です。この地震では岩手県での最大震度は2ないし3でしたが、岩手県気仙郡で38.2mという当時として最大の津波遡上高を記録しました。1677年の延宝房総沖地震も津波地震と考えられています。
  • アウターライズの地震
     アウターライズとは、海溝の外側で海底がなだらかに盛り上がっている地域が広がっており、その場所を指します。我々に特に関係が深いのは、東北沖のアウターライズで発生する地震です。
     アウターライズの地震が怖いのは、震源が海岸から大きく離れているので、津波地震同様震度は小さいのですが、やはり震度の割に大きな津波が襲ってくるのです。
     東日本大震災が2011年に発生しましたが、実はこの地震とペアになるアウターライズの地震(マグニチュード8クラスと想定されています)が、今後発生する可能性は極めて高いというのが、地震学における常識です。
     実際に 1896 年の明治三陸地震とペ アになる アウターライズの津波地震が 1933 年の昭和三陸地 震と考えられており、実に30年以上経ってから発 生しているのです。
  • 熊本地震の前震、本震のエネルギーの違い
     2016年4月14日の地震(のちに前震となった)のマグニチュードはM6.5でした。また16日に発生した地震はM7.3と発表され、気象庁は「こ れが本震」と発表しています。14日の地震は震度7が記録されたため、この点が非常に大きく取り上げられましたが、震度は「ある1地点の揺れ の大きさ」であり、地盤が悪かったり、装置の設置の仕方が悪いと大きな値を示す事があります。また14日の地震では震度6強は観測されません でした。
     それに対し、16日の地震は震度7こそ報告されなかったものの(後日調査により2地点で震度7を記録していた)、多くの地点で震度6強を記録しました。それでは地震そのもののエネルギーは 14日の地震と16日の地震ではどれくらい違っていたのでしょうか。
     マグニチュードの差は0.8です。マグニチュードというのは対数というスケールで、1違うとエネルギーは約32倍違うのです。マグニチュー ドが2違うと1000倍違うのです(これが定義)。マグニチュードが0.2大きくなるとエネルギーは約2倍、0.4大きくなると約4倍、0.6違 うと約8倍、0.8違うと約16倍という関係になります。従って、14日の地震と16日の地震ではまさに1桁違うエネルギー(16倍)が放出されたのです。
  • 前震・本震・余震とは
     2016年の熊本地震の発生後、「前震という言葉を初めて聞いた」と答えた方々が多くいらっしゃいました。これは、いかに地震学者の啓発活動が上手く行っていなかったかを如実に示すものだと思います。

      それでは前震とは、どんな地震なのでしょうか?今回の熊本地震でも、当初、4月14日に発生した地震を本震として発表していました。ところが、16日のM7.3の地震が発生したあとに、「実は14日の地震は前震であった」という発表になったのです。つまり本震が発生した後に「前震」となるのです。
      つまり、現在の地震学では、前震のおおよその特徴は判明していますが、地震が発生した時に、その段階で発生した地震が前震なのか、本震なのかを確実に判断する事は極めて難しいのが実情です。もし前震と普通の地震とを確実に区別できるのであれば、特定のケースであっても予知情報を出す事ができる事になります。
     日本の場合、(結果として)前震が伴う地震は1割以下と考えられています(中国大陸ではおよそ2割の大地震に前震が観測されたという報告もあります)。
     また余震という言葉は極めて良く耳にされるかと思いますが、これは本震で大きく地下の状態が変わったため、それらをある意味釣り合わせるために、発生する地震活動で一般的には指数関数的に活動が減衰する事が知られています。また最大の余震というのはやはり経験則ですが本震のマグニチュードマイナス1程度(つまり本震がM7.5なら最大余震はM6.5 程度)の場合がほとんどです。