志田林三郎「地電気の説」

週末、家の中を探していたら*1、志田の論文を含む地震学会誌の冊子が手元にありました*2。

思い起こすと、 昔々ドイツ・ドレスデン市を訪ねたとき古本屋で見つけた図書館払い下げのオリジナルもの。
週末ざーっと目を通してみました。


グラスゴー大留学から帰国後、釜山と長崎、長崎―佐賀（呼子）間の電信線を使って地電位観測をした。
志田は観測のための自動電流計も開発している。
論文には1885年の一年間の記録を示しているが、残念ながら観測中に大きな地震は起きていない。


Automatic Current Recorder (R. Shida, 1886)

森　俊雄, 長期電位試験観測, 気象研究所研究報告, 36, 2, 149-155(1985)に、以下の記述あり。（関連：気象研究所技術報告第26号, 1990）


地電位観測の始められた1800年代には，電信線を使用して，数10km一数100kmにのぼる基線で
地電位観測が行なわれた（例えば，Shida，1886）が，詳しい解析はなされていない。


でも、VAN法と同じ方法が我が国で明治の時代に試験されていた、ということになる(!?)

R. Shida, On Earth Currents, Transaction of the Seismological Society of Japan 9, 32-50 (1886).
志田はこの論文の冒頭で下記のように述べ、地電流と地震との関連の重要性を次の様に指摘している。


The fact that the phenomenon known as “earth　currents” is intimately associated with those of 
earth magnetism, auroras and sun-spot, makes the study of earth currents interesting and important. 
But the fact that these appears to be some connection between earth currents and wind-storms 
and earthquakes, makes the study of earth currents still more interesting and important to us 
who live in a country which is so often visited by these destructive phenomena.


地電気の説というのはこのことでしょうね。
実際に観測はしたけど、期間が短く地震に関わる信号は取れていないので．．．．。

この論文の前に下記の論文を執筆している。
R. Shida, Automatic Current Recorder, ibid, 23-31(1886).
この論文の6年後(1892)に他界。　　
1881年には濃尾地震があったのだけど、病の身だったんでしょうね。　　　合掌　


榎 本


*1　榎本コレクション（信州大学 繊維学部アーカイブ：平成20(2008)年度に，創造工学系機能機械学課程
　　榎本祐嗣教授より信州大学へ寄贈された蚕糸や科学の歴史に関する貴重な資料です。）
*2　ミルンら滞日外国人が中心となって明治１３年に設立した日本地震学会は１３年間続いたのち解散した。
　　その紀要は全部で１６巻刊行された（John Milne）

The only paper which has hitherto been brought in the notice of the Seismological Society of Japan
treating of the relationship of earthquakes, earth currents, and magnetic phenomena is the contribution 
by Professor R. Shida on "Earth Currents"(Trans. Seis. Soc., Vol.IX, Pt.I.)

J. Milne, Earthquakes in connection with electric and magnetic phenomena, Trans. Seismo. Soc. Japan, Vol.XV（1890）135.

* 本学名誉教授 榎本祐嗣 先生が叙勲により「瑞宝中綬章」を受章（信州大学, 2014.11.07）