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この話を ストリーミングオーディオで聞く、 ファイルをダウンロード、 ヘルプ。 2003年8月11日:多くの人々にとって、地震は予知できないことと同義です。地震はいつも突然起こります。そして地震学のすべての業績にもかかわらず、科学者は気象予報官が嵐の接近を注意するように、切迫した地震の警告を発することができません。 地震はだしぬけに襲うように見えますが、地震が解放する莫大なエネルギーは何ヶ月から何年もの間、地殻内の応力という形で増えていきます。現時点ではその応力を知ったり、応力がいつ臨界点に達するか検出する直接的手段は予報官にはありません。 上: カリフォルニア1994年Northridge地震における地震エネルギーの3D可視化 クレジット:カリフォルニア大学サンタバーバラ、キム・オルセン [もっと]
「衛星による地震の前兆を観測する有望な手法はいくつかあります」とJacob Yates(NASAゴダード宇宙飛行センターの研究者)は言います。「1つの方法は干渉測定の合成開口レーダー(InSAR)です。基本的にInSARは、データ融合とよばれる過程で任意の地質構造の領域の2つのレーダー画像がいつ組み合わせられるかということです。そして地表面での地殻変動のどのような変化も検知できるかもしれません。」 この技術は、1年に1mm程度の非常に遅い地殻変動を検出できるほど十分に敏感です。広範囲にわたる衛星の測定精度により、科学者は以前より多くの詳細な断層線周辺の地表の小さな運動や歪みを知ることができます。これらの動きを見ることによって、科学者はどこに大きな歪みが形成されるか見つけることができます。 下: 1999年のヘクター鉱山の地震により生じた地表面の高度変化を示すInSAR画像。レーダー・データは9月15日と1999年10月20日に欧州宇宙機関のERS-2衛星によって取得されました。 [もっと] 最近、NASAとJPLのキャロル・レイモンドが率いる大学の研究グループは、宇宙から地震を予測する実現可能性を研究しました。4月にリリースされた報告書は、InSARを利用して、世界中の断層帯を監視する衛星(グローバル地震衛星システム(GESS))のネットワークを展開させる20年の計画を概説します。 訓練をした上で、最終的には科学者は、与えられた断層における月毎の「危険評価」を出し、地殻中の応力がいつ危険なレベルに達したか推論するためにInSARデータを利用できるべきだ、とレイモンドは言います。予報官は例えば次の1ヶ月にサン・アンドレアス断層上の大きな地震の可能性は2%、10%、あるいは50%だ、と報告できるかもしれない。 現在の方法はそれほど確かではありません。例えば最近、米国地質調査所は、その地域の地震履歴、地質及びコンピューターモデルに基づき、サンフランシスコ湾周辺の地震危険度の最新評価を公開しました。報告書では今後 30年 以内に(マグニチュード6.7もしくはそれ以上の)地震の確率は62%であるとしています。 ―― あなたの日々を計画できるようなものではありません。 InSARは地震を予測する一つの方法ですが、恐らく唯一の方法ではありません。InSAR衛星が単にオーソドックスな地震学で利用可能なデータを改善する一方、通説を破る別の技術があります。 宇宙からこれらのホットスポットを検出するために、赤外線カメラを搭載した衛星を利用することができました。実際、ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)のFreundと同僚のDimitar Ouzounovが、NASAのTerra衛星によって取得された赤外線データを調べたところ、2001年1月26日のグジャラート地震の直前にインド西部の地表面温度の上昇を発見しました。「熱異常は+4℃ほどもあった」とFreundは言います。 上: 2001年1月21日のインド・グジャラート周辺地域の赤外線画像。黄−オレンジの領域は、1月26日の地震の数日前に出現した熱異常をトレースします。箱の中の星印は震源を示します。クレジット:NASAのTerra衛星に搭載されたMODIS [もっと] 何故、圧力下の岩石は赤外線を放射するのでしょう?誰にもはっきりしたことはわかりません。放射の周波数スペクトルは、摩擦による内部熱を示します-- 例えば岩石摩擦――輻射に責任はありません。 1つの室内実験で、Freundたちは赤色花崗岩の塊を1500トンプレスにかけました――何らかの方法で何マイルも地下の状態を模擬するために。JPLとGSFCで開発された高感度カメラが岩をモニターし、赤外線の放射を検出しました。更に、岩の表面で電圧が増加しました。このことから原因は電気的なものかもしれないとFreundは考えます。 下:Freundらによって行なわれたこの実験のように、室内実験では赤色花崗岩に非常に大きな圧力を加えると、表面から赤外線を放射します。[もっと] 通常、岩石は絶縁体です。しかしながら、大きな応力下に置かれた岩石は、時々半導体のように振る舞います。Freundは、地震の前に「欠陥電子」あるいは「正孔」とよばれる一対の正電荷が分割され、応力を受けた岩の表面へ移動すると考えます。そこで、それらは互いに再結合し、その過程で赤外線を放射します。この解釈は実験である程度説明できますが、まだ科学者間の広い合意を得ていない新しい理論である、と彼は言いました。 岩石中の電流は、他の奇妙な観測結果を説明できるかもしれません。磁力計を扱う研究者は大地震の直前に、微小でゆっくりとした地磁気変動を観測しました。一例として1989年にサンフランシスコを破壊したLoma-Prieta地震では、地震のほぼ2週間前に、低周波磁気信号 (0.01-0.02Hz)の値が通常の20倍以上にはね上がり、地震発生日には更に高い値を示しました。 これらの信号の原因は不明です。Freundの考えに付け加えると、岩石の破壊で解放されるイオン導電性地下水の深部での移動、花崗岩のような結晶岩から放出される電子によって解放された電磁気エネルギー、及びある種の岩石に印加された圧力が引き金となって生じたピエゾ-磁気効果が理論的に考えられます。 下: 低周波磁気信号は1989年のLoma Prietaの地震の前後31日間記録されました。 [もっと] QuakeFinderという会社は、低軌道周回衛星がこれらの弱い磁気信号(典型的には1ナノテスラ未満)を検出できると期待しています。地上のセンサーは同様にこれらの変動を検出することができます。しかし極軌道衛星は、地表面の大部分を毎日観測できる利点があります。 赤外線と電磁気的手法による地震予測は論争の的になっています。今のところInSARは地震予測のためのより安全な賭けであるように見えます。しかしながら、全ての3つの手法は期待をかき立てる可能性を示します。いつの日か地方の天気予報は、私たちの頭上で起きる嵐だけでなく、私たちの足の下で起ころうとしているものも予測するでしょう。 |
Credits & Contacts Author: Patrick L. Barry Responsible NASA official: Ron Koczor |
Production Editor: Dr.
Tony Phillips Curator: Bryan Walls Media Relations: Steve Roy |
NASAマーシャル宇宙飛行センター科学理事はサイエンス@NASAのウェブサイトをサポートします。サイエンス@NASAの目的は、一般市民がNASAの研究がどんなに刺激的か理解するのを支援し、NASA科学者が教育普及・啓発活動責任を果たすことの支援です。 |
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