楠城一嘉博士講演会

日時:2007年11月1日 13:00-14:30
主催:東海大学海洋学部(清水キャンパス):アクセス
会場:9号館9201教室
地震予測をテストする:ヨーロッパでの最近の動向と日本におけるテストセンター設立へ向けての提案
スイス連邦工科大学スイス地震局
楠城 一嘉
E-mail: kazuyoshi.nanjo[at]sed.ethz.ch
Tel: +41-44-6337638; Fax: +41-44-6331065
HP: http://www.seismo.ethz.ch/
 信頼できる地震予測が可能かどうかを明らかにすることは、物理学分野でもっとも困難な未解決問題のひとつであり、この予測に対する一般社会からの要請は大きい。現在のところ、地震の長期予測に含まれるような"地震の長期評価"は実用化されており(例えば、地震調査研究推進本部のホームページ)、10年以上の予測誤差をもって地震の発生時期を予測することに相当する。しかしながら、100年以上にわたって地震研究が行われてきたにも関わらず、地震の長期予測より実効性の高い、10年かそれ以下の誤差を持って大きな地震の発生時期を予測するための(地震の中期または短期予測)確率論的手法は未だ実用化されていない。
 一般に地震に伴う脆性変形は決定論的カオスの典型例と考えられているために、地震は予知できないと議論する地震学者がいる。そのため、研究者の中には、仮に前兆的シグナルを検地する能力が十分に改善されたとしても、長期予測より実効性があり、なおかつ社会的要請に応えうるだけの実用性をもった予測が可能かどうかについて懐疑的な者もいる。
 しかしながら、これまでの私の研究成果と現在得られつつある地震学分野の成果を元に、"今"が地震中期または短期予測に関連する研究に取り組むべき最良の時であることを以下の4つの観点から提案する。
1.過去十年間程度で急激に改善された地震および地殻変動の観測網によって検出された精度の良いデータの蓄積
2.高性能のコンピュータの普及による、データマイニング、データの品質管理、数値計算における新技術
3.リアルタイムで運用可能な時間依存型のハザードアセスメントに用いることができる、統計または地震物理に基づく予測モデル(例えば、STEP, ETAS, PI, クーロン, RIPPYなど)
4.予測実験を行ううえで十分なインフラストラクチャーを持った、地震予測可能性を研究する世界規模の共同研究プロジェクト(Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability:CSEP, Jordan, 2006)
 以上のような最近の地震学の進展を元に、信頼性の高い確率予測のプロトタイプモデルを構築する。そして、その予測モデルが有効に働いていることを示せる、十分な客観性を持つテストを行うことが重要である。そのためにCSEPのような予測実験が可能な環境を活用することが望まれる。本論文では、CSEPのヨーロッパ支部の活動として得られた最近の研究成果を簡単に紹介する。そして、日本の地震予測研究を推進する上で重要な課題を指摘し、"今"がその研究課題に取り組むべき時であることを提案する。

* 参考資料:Regional Earthquake Likelihood Models (Seismological Research Letters, Vol. 78, No. 1, 2007)

関連リンク
  • nkysdb: 楠城 一嘉Nanjo, Kazuyoshi, Dr. (ETH Zurich - Earthquake Statistics Group)
  • 研究成果:楠城 一嘉地震予測解析グループ(統計数理研究所)
  • 地震活動の評価に基づく地震発生予測(地震研究所)

  • 統計地震学と赤池さん | 地震活動のモデルと解析‥‥尾形良彦(総研大ジャーナル)
  • 地震活動のモデルと予測に関する研究(石辺岳男の部屋)
  • Critical Point Theory and Space-Time Pattern Formation in Precursory Seismicity (Tectonophysics, Volume 413, Issues 1-2, Pages 1-126, 2 February 2006)

  • 地震予報地図ウェブ公開、24時間以内の発生確率を色分けで (Wiredvision)
     米地質調査所(USGS)は18日(米国時間)、カリフォルニア州の地震予報地図をウェブサイトで公開した。同州で24時間以内に強い揺れの地震が発生する確率を、地域ごとに色分けして表示する。データは1時間に1回以上の頻度で更新するという。
     地図上の色は、改正メルカリ震度6(気象庁の震度4に相当)の揺れの地震が24時間以内に発生する確率を示す。10万分の1以下の地域が青、1000分の1が黄緑、10分の1以上がオレンジから赤というふうに、グラデーションで表示し、クリックで拡大表示もできる。
     USGSカリフォルニア支部とスイス連邦工科大学チューリッヒ校が協力して開発したもので、USGSと南カリフォルニア大学南カリフォルニア地震センターが資金を拠出した。予報地図は、5月19日付の英科学誌『ネイチャー』でも紹介された。[]
     同州は米国最大の地震頻発地帯。官学による地震研究が盛んで、州政府などによる防災対策も進められている。

    * 関連:LA's 'Big Squeeze' Continues, Straining Earthquakes (JPL)
    パターンインフォマティクスを用いて将来の地震の発生場所を予測する:レヴュー(統計数理 第54巻 第2号)
     この予測地図は、我々の研究グループの一人(John B. Rundle)によって、2004 年10月14-16日に東京で開かれた国際会議(International Workshop on Geodynamics: Observation, Modeling,. and Computer Simulation)で報告されていた。その後に 2004年10月23日にm=6.8の新潟.中越地震が発生した(その震源位置は,おおよそ北緯37.3度,東経138.7度,深さ13 km). 図2(a)が示すように,この地震はホットスポットの近傍で起きており,m ≥ 5 の余震はその上または近傍で起きていることがわかる(Nanjo et al., 2006a).従って,これらの地震の発生場所の予測に成功していることが一見してわかるが,必ずしも全ての地震がホットスポット上で起きているわけではない.
    16回中15回、危険当てる-米、過去の地震から予測(2004.10.14 共同)
     今後10年間に比較的大きな地震が起きる危険地域を過去の地震データから予測する新手法を、米航空宇宙局(NASA)と、カリフォルニア大デービス校のジョン・ランドル教授らが5日までに開発した。NASAによると、2000年以降、カリフォルニア州内でマグニチュード(M)5以上の地震は16回あったが、うち15回が予測した危険地域内だった
     日本の研究者も予知に利用できないかと研究を開始、有望な結果が得られたとしており、ランドル教授が13、14の両日、京都大と東京大で成果を発表する。
     教授らは、カリフォルニア州を約11キロ四方の約4000区域に分け、1932-99年に起きたM3以上の地震を調査した。99年までの一定期間中に、それ以前の地震と比べて活動が活発化したり沈静化したりするなど目立った変化があった区域に着目。計算式を当てはめて、2000年以降の10年間にM5以上の地震が起きる可能性が高い所を予測した。
     日本学術振興会の楠城一嘉研究員は同教授と共同で、この手法で阪神大震災の予測が可能だったかを研究し「予測できた可能性が高い」との結果をまとめた。ランドル教授は「この手法は、今後10年に地震対策が必要な地域の絞り込みに役立つ」と話している。

    * 関連:Earthquake forecasting and its verification (Nonlin. Processes Geophys., 12, 965-977, 2005)
    * 参考:Space-Time Patterns, Computer Simulations, and Earthquakes: Is this a "New Kind of Geophysics"? (John Rundle, USGS EHZ Seminar)

    ジョン・ランドル関係
  • Rundle Group
  • ジョン・ランドル教授の「地震予知」 フジテレビ「めざましテレビ」(2004.10.15)やテレビ朝日の特番(2005.3.26)でも紹介されました。
  • Earthquake prediction: A seismic shift in thinking | Japanese quake took seismologists by surprise (Nature, October 2004)
  • Digital Temblors: Computer Model Successfully Forecasts Earthquake Sites | Video - Earthquake Forecasts (Space.com)
  • The Use of Computer Simulations for Developing Earthquake Prediction Technology(東京大学21世紀COE)
  • スウェーデンの政府機関、地震予知モデル開発に成功?(Wired News)
  • CITRIS Research Exchange: The California Hazard Institute (CITRIC)

  • QuakeSimFinal Report [pdf]|GLOBAL EARTHQUAKE SATELLITE SYSTEM (GESS)地震の予測 (NASA)


  • Earthquake! What's Your Risk? (AIP)
    At www.openhazards.com, data from around the world including satellite images and seismic measurements taken below ground are put together in real time to show each person’s own risk. “The inputs we need to make that work are things like year it was built, number of stories, what type of ground it’s on,” John Rundle, geologist at Open Hazards told Ivanhoe.

    The site also ranks 102 cities by risk. Right now, Tokyo is number one. “Probability of mag six is within one year is 14% probability within 15 miles of Tokyo,” Rundle said.

  • InSAR関係
  • InSAR Research Activities in Japan
  • PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface
  • リモートセンシング用語集

  • 便利なリンク
  • しみずライナー時刻表(JRバス関東)
  • えきネット(JR東日本)

  • [地震電磁気セミナー]