Subject: [sems : 1020] 文献紹介
Date: Fri, 19 Oct 2001 13:00:03 +0900
To: sems@eqibm18.iord.u-tokai.ac.jp

SEMS会員の皆様
下記の拙文に御批判を頂ければ幸いです。

文献紹介

”地震予知は可能か”、串田嘉男 pp.40 - 46
”電磁現象に距離を置く地震学者”、清水正巳 pp.47-48
日経サイエンス Vol.31 No.11 (2001年11月)

 串田氏の文は、既発表のものに比べて、簡潔明瞭になっている。従来と異なるのは、「地震の発生日時の推定式は容易に導き出せる」としている点である。著者は、読者が誘導することを期待していると思われるが、時間の無い人、または誘導に興味の無い人のために、下記に示す。

    Tmap = 0.78 × Taa または Tpp = 0.2 × Taa
ここに、Tmap:異常電界の極大時から地震発生時までの時間
    Tpp: 異常電界の消滅時から地震発生時までの時間
    Taa: 異常電界の最初の発生から消滅までの継続時間

 前兆検知実績の表(M:5.0 - 6.2)の91/04/12以降では、Tmapは3〜6日で、実際の値との差は零日となっている。なお、この表の上記の期間のMの予知値と気象庁の発表値との差も誤差0.5の範囲に収まっている。

 清水氏の文の最初と最後は下記の通りである。
『地震前に電磁的異常現象が起こるという報告を地震学者の多くは冷淡に見ている。ただ、現象自体は地球科学の新たな分野を開く可能性がある。メカニズムの解明こそ、科学者がいま取り組むべき課題だろう。
 電磁的方法の研究者は個性も強く、一人一派を形成している。それぞれが開拓した方法の特許も取っており、自らが中心になっていないと満足しない研究者ばかりだ。
 こうした個性が幅広い科学者を巻き込む障害になっていて地震研究者も距離を置きたがる傾向が強い。
 電磁的現象に科学者が面白さを感じないのは嘆かわしい。地震学者が地殻変動以外の研究に極めて冷淡なのも奇妙だ。電磁的方法は、研究結果を科学界のルールに従って批判にさらし、現象を科学的に検証すべき時期に来ている。』
 上記の文を、一笑に付し、無視する人が多いかも知れないが、上記と類似のことを所属組織から言われ、電磁気的手法による研究が認められない人が多いのではないだろうか。
 メカニズムの解明が、はたして、研究の必須最優先課題だろうか。Newton もEinstein も、彼等が解明した基本的メカニズムは、観測結果から演繹または帰納しており、メカニズムから全く新しい現象が明らかになることは例外に近い。また、メカニズムが最近明かになった現象に、氷上の物体が良くすべること、雷の帯電があるが、共に、解明されたからと言って、これらの現象が今まで以上に明かになったわけでもない。あたりまえのことに気が付かなかったことが明かになっただけである。
 特許を取る事を、やましいことのように言っているが、特許は、一般的に先願主義だから、特許を取らないと、例えば、国費による研究でも、成果の利益が無関係な特定個人のみの利益となってしまう可能性が大きい。

 高 橋 耕 三


Source: [sems-net 1020]