平成15年12月の課外講演 12月17日(水) 電気通信大学電子工学科教授 早川 正士氏
電磁気現象を用いた地震予知の可能性 地震が始まると地殻内で電磁波が発生する。この電磁波が大気、電離層に影響を与えるため、電磁波を観測することにより、地震の数日前から地震の生じる日及び地震の大きさであるマグニチュードが予測できると解説された。
地震予知のための電離層の観測において、大きな地震の予兆として電離層の擾乱が3〜6日前に大きな変化として観測される。そのため、電離層を観測するにあたってその観測する周期が重要となってくる。また、電離層の観測においてほぼ継続的に観測をおこなうために多くの電力を消費することとなる。本ミッションではdawn dusk orbitを利用することによってこれらの問題点の解消を試みる。さらに、本ミッションでは3機の衛星を同じ軌道上に時間差をおいて投入することにより、短い周期での観測が可能になる。この際、各衛星間で連携することにより、電離層を大局的に観測する。また、各衛星にテザーによってつながった子機衛星を設置することによって局所的な観測も同時に行う。また、極超長波の観測を行うことで短期的な予知だけでなく、長期的な予知も可能にする。
現在、日本のみならず世界各国で地震が大きな問題となっている。地震に対する短期的な予知に加え、中・長期の予知を可能にするような衛星を提案した。今回地震予知用観測衛星のアイディアを考えるにあたり、数々のプレートの境目に存在している日本が他国に比べて地震予知に対し、あまり高い関心を持って取り組んでいないのが現状である。特に宇宙開発に関して様々なベンチャープランを提案しているアメリカやロシア、フランスのみならず、中国までもが地震予知に関する衛星開発に取り組んでいる。この点に関しては、日本は大きく後れを取っているといえる。この機会に、大きな脅威でありながら非常に身近である地震について今一度再認識し、近い将来起こると予測されている大震災に対する事前準備を積極的に取り組んでいく必要があると考える。今後、今回提案したような衛星についての研究を深め、より地震を始めとする災害の対策を提案していく必要があるといえる。
本学科学生と研究科学生が提案した”Ionoss”が地球電磁気・地球惑星圏学会賞を受賞しました(防衛大学校航空宇宙工学科) 夢は宇宙へ 人工衛星設計コンで受賞(朝日, 2010.11.25) 帝京大の宇宙システム研究会は航空宇宙工学科の学生や大学院生ら約20人でチームを作り、「微生物の観察」をテーマに人工衛星を設計。大学や高専など17校が応募した「アイデア部門」に参加した。最終選考に残ったのは帝京大を含め、防衛大、東京工業大、鳥羽商船高専の4校。部門の最優秀賞に当たるアイデア大賞は「該当者なし」だったが、衛星の構造や着眼点が評価されて主催者賞の一つ日本機械学会賞を受賞した。第18回衛星設計コンテストに参加した ごんざぶログ | togetter
【受賞名称】Source: 衛星設計コンテスト(防大タイムズ, 2011年1月)
第18回衛星設計コンテスト
地球電磁気・地球惑星圏学会賞
【受賞者】
本科 第4学年 航空宇宙工学科 石黒 巧眞(写真中)
本科 第4学年 航空宇宙工学科 滝口 謙介(写真右)
理工学研究科前期課程 2等海尉 齋藤 健太(写真左)
【受賞年月日】
平成22年11月20日
【受賞作品名】
電離圏観測衛星群 Ionoss
【受賞者のコメント】
今回、衛星設計コンテストにおいて「Ionoss」が地球電磁気・地球惑星圏学会賞を受賞させていただきました。衛星の設計に当たり、ほとんど知識のなかった私はゼロから衛星を設計するという創造的な作業に大変苦労しましたが、学会で発表するという貴重な経験をさせていただきました。共に設計を行った齋藤学生と滝口学生に心から感謝を申し上げたいと思います。(石黒 巧眞)
規律正しい集団生活を送りながら限られた時間と厳しい環境下で各々が一生懸命努力し、結果を出すことができました。苦心しながらも知恵を振り絞り学び得たものは結果以上の価値があると思います。この成果を無駄にすることなく、これからも研究に邁進していく所存です。(滝口 謙介)
コンテストではミッション部のフィージビリティスタビリティ及び模型作製の補佐をしていました。さまざまな技術的な問題を乗り越えることができたのは1つのチームとして力を合わせた結果だと感じています。このモノ作りの喜び、成し遂げた達成感をより多くの人に体験してもらいたいと思います。(齋藤 健太)
【衛星設計コンテスト】
全国の大学院、大学及び高等専門学校等の学生を対象とした宇宙ミッションについてのアイデアや衛星の設計を競うコンテストであり、日本機械学会や日本航空宇宙学会、地球電磁気・地球惑星圏学会などが共同で主催している。宇宙開発のすそ野の拡大などを目的とし、1992年から開催されており、第18回大会には、東京工業大学、名古屋大学をはじめとして31チームが応募し、書類審査にて9チームに絞られた後、最終審査会が開催された。
【地球電磁気・地球惑星圏学会賞】
衛星設計コンテストに応募した衛星の中から地球や太陽系惑星などの観測に関し、優秀と認められたものに贈られる賞で、毎年1件のみの表彰となる。なお、地球電磁気・地球惑星圏学会は昭和22年に創立された地球電磁気学及び地球惑星圏科学に関連する学術並びにその応用技術の進歩に寄与することを目的とした学会である。
【電離圏観測衛星群 Ionoss】
フォーメーションフライトとテザーシステムを利用し、多数の衛星を協調させて局所的及び大局的に電離圏を観測する衛星群システムを提案した。電離圏の観測は、近年、衛星による地震予知への応用としても関心が高まっており、本衛星群は、そのための基礎データを収集することを目的としている。この衛星群で得られた結果を早期の地震予知に役立てることで地震発生に伴う被害を減少させることが期待できる。
日本人は、忘れやすい民族であるとよく言われます。
過去の嫌な出来事を忘れ、未来のより良い新たな環境醸成に前向きに取り組むといういい側面での民族性であると思いますが、一方で、今回の災害は絶対に風化させてはならない出来事であることは国民等しく認めるところであると思います。
「天災は、忘れた頃にやってくる。」とは、多くの先人が身をもって体感してきた透徹した教えであり、我々自衛官や軍人への教訓としてよく指導される「治にいて乱を忘れず。」という教え同様に、今後数十年いや数百年後の子孫に語り継がれるよう民族の遺伝子に組み込ませるような工夫が必要であると考えます。
そのためには、3.11を「津波防災の日」に指定し、毎年、今回の悲劇を国民が等しく振り返り、災害、特に津波災害に備える決意を再確認する日にしたり、教科書に掲載し、子供たちの教育の中に防災教育を取り入れるなど、後世に教え伝えていく施策を講じる必要があるものと思います。
科学技術が発達し、未来予測がある程度可能になった分野が多い中で、地震の発生予知は未だもって確立できないでいます。地震大国の我が国の専門家・有識者諸氏におかれては、首都直下型地震や東海地震のみならず全国規模での予知技術の精度向上と予報の伝達手段の普及定着に関する研究の進展を大いに期待したいところです。
「ナマズが多く取れるときは地震あり。」とか「ナマズが水面に浮かぶと地震あり。」とか安政の大地震や関東大震災時にナマズの動きで地震を予知したとの経験談を話す人も多いと、かつて何かで読んだことがあります。ナマズに限らず水中生物は、地震前の地盤の変動や水の変化に刺激を受け、特異な行動を取ることが実証されているようであり、それを予報に活かすことを唱える人もいるようです。
何事においても未来を予知することは極めて困難なことでありますが、非科学的と見える現象からも科学的な立証を経て、予知技術として活用できることがらもありそうです。
今後、多様な分野からの地震予知技術の開発を期待したいものです。
人類が進歩するに従って愛国心も大和魂もやはり進化すべきではないかと思う。
砲煙弾雨の中に身命を賭して敵の陣営に突撃するのも確かに尊い大和魂であるが、
○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのも
また現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してしかるべきことではないかと思われる。(天災と国防 寺田寅彦)
The Great Eastern Japan Earthquake (GEJE) on March 11, 2011 was the worst disaster in the nation's recorded history. The triple combination of an earthquake, tsunami, and meltdown of the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station dealt a severe blow to northeastern Japan, resulting in the largest and fastest mobilization of the Japanese Self-Defense Force (JSDF) since its establishment in 1954, and an unprecedented cooperative relief effort with the US armed forces, Operation Tomodachi. The JSDF's commendable efforts in the face of this challenge demonstrated its incredible strength and the US-Japan alliance, but the unprecedented nature of this disaster response also generated a number of "lessons learned."
This report, written by Yuki Tatsumi, documents the challenges faced by the JSDF related to its capabilities: from C4ISR (command and control, communications, computers, intelligence, surveillance and reconnaissance) to logistics, and even the JSDF's capability to respond to nuclear accidents. It also discusses potential areas of improvement in terms of the JSDF's institutional organization, including enhancing joint-ness among the three services, improving JGSDF's organizational structure, and mental health support for personnel. The report also outlines the limitations of the current legal mechanism that launches bilateral defense coordination with the US in case of non-combat emergencies, and the need for the JSDF to find a relational balance with US Forces Japan and PACOM. Although the Japan Ministry of Defense has already started to implement these lessons, the report points to the challenges that the ministry faces in successfully implementing them, as it strives to develop the JSDF into a truly "dynamic defense force."
Click here to download the report.
II 宇宙開発利用の現状と課題* 4.工学利用(ELMOS衛星群ミッション提案書【Draft】)
1. 情報収集・警戒監視
(2) 電波情報収集機能
【課題】電離層を透過した電波の特性等についてより一層の解明が必要である。
6. 安全な宇宙開発利用の支援ための方策
(2) 宇宙状況監視
【現状】防衛省・自衛隊においては、衛星の機能障害の原因となる太陽風・電離層の状態といった宇宙環境を観測する能力や、宇宙ゴミを監視する機能を有していない。
独立行政法人宇宙航空研究開発機構シニアフェロー 川口 淳一郎 氏、「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」と題して課外講演
防衛大学校は、平成24年11月22日(木)、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)シニアフェローの川口 淳一郎 氏を講師として招へいし、「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」と題して、本科、研究科学生などを対象とする課外講演を記念講堂において実施いたしました。
川口講師は、ハレー彗星探査機、火星探査機などのミッションに携わられ、イオンエンジンの研究開発の第一人者として、小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーを務められました。
また、今年7月から内閣官房宇宙開発戦略本部事務局長に就任され、まさに我が国の宇宙開発事業の取り纏め役として活躍されています。
講演では、プロジェクトの予算を獲得した時の苦労から『はやぶさ』が小惑星イトカワへ着陸してサンプル採取した後、制御不能となるなど、数々の困難に直面したが、プロジェクトメンバー全員の懸命な取り組みにより、地球への帰還を成功させるまでの苦心や教訓などを語られました。
引き続き、川口講師は「人は失敗して初めて『無知の知』に気付くことがある。それは自ら体験しなければ学べない半面、失敗がトラウマになって研究から去ってしまう人もいるが、失敗を恐れず挑戦し続ける気持ちが必要だ」と述べられ、今後は後継者を育てるためにも共同でプロジェクトに取り組み、技術や経験を伝承していかなければならないと語られました。
講演終了後には、本科学生から多くの質問が出るなど、非常に有意義な講演となり、会場から大きな拍手が起こりました。