科学的な研究
大正12年(1923年)の関東地震後に、青森県の東北大学付属浅虫臨海実験所において畑井新喜司博士らが科学的なナマズと地震との関係に関する研究を試みました。水槽に飼育されたナマズに対し、ガラスをノックしたときの反応の敏感さを観察しました。その結果、80%の確からしさで数時間以内に地震を感じたと報告されました。 また、地面に微弱に流れている地電流も同時に計測した結果、地電流にV字の変化が現れたときにナマズが反応しているとも報告しています。
東北大学付属・浅虫臨海実験所(2001.10撮影:野田)
東京都水産試験場においてナマズと地震との関係に関する研究が1976年4月から1992年3月までの16年間行われました。もちろん、俗信から始まったわけでなく、畑井博士らの研究成果も含め、文献調査、聞き取り調査から慎重にナマズを選定しています。電気的に敏感であることも考慮されました。試験場の広い敷地内の静かな場所のプレハブ小屋内に3台の水槽を設置しナマズが飼育されました。 公害用の振動計を水槽内部に設置し、24時間連続でナマズの暴れ程度を振動として記録を行いました。 1978年から1992年までのナマズの異常行動と東京都での震度3以上の地震91例のうち、実験が欠測となった4例を除いた87例に対して、明らかに10日前に異常行動が見られたものが27例あり、単純に打率に直すと3割1分であったと報告されています。
それでは、なぜ地震の前にナマズが騒ぐのか?に触れてみましょう。
一般的に動物を刺激する要因は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、温度覚、痛覚、振動覚、平衡覚、電気覚などの感覚を刺激すると考えられます。これらを刺激する現象が地震に先行して発生していることが考えられますが、いまのところそれらの現象に関しては明確に示されるに至っていません。しかし、情報の少ない中において、現在、動物を刺激する要因としての最有力候補は、帯電エアロゾルとパルス状の電界変動などが考えられており、科学的な研究が始められています。もちろん様々な要因が複合して刺激を与えている可能性も考えられています。